崩落事故があった建物の解体工事現場=9日、千葉市中央区で(北村彰撮影)
9日午前10時ごろ、千葉市中央区富士見のビル解体現場で、2階の床が崩落し、1階に停車中のダンプカーに乗っていた作業員の男性3人が巻き込まれた。千葉中央署や消防によると、東京都江東区、塚田タクシンさん(56)と江戸川区、駒形茂さん(73)ががれきの下敷きになって死亡し、30代男性が首をねんざする軽傷を負った。
解体工事は上階から順に取り壊し、この日は被害者を含めた作業員28人で3階部分の鉄骨を切断していた。2階床に鉄骨を置いた際、重みに耐えきれずに崩落したとみられ、署は安全管理上の問題がなかったか詳しく調べる。
署などによると、当時、駒形さんはダンプカーの荷台の上でコンクリート片から鉄骨を取り除いていた。意識不明のまま病院に搬送され、4時間後に死亡。塚田さんは運転席にいて車ごと押しつぶされ、5時間半後に救出されたが死亡していた。30代男性も荷台にいたが、がれきの直撃をまぬがれて119番通報した。
ビルは地上11階、地下2階建てで、2018年まで市の「文化交流プラザ」だったが、2019年に民間に売却されていた。
現場はJR千葉駅から東に約200メートルで、ビルやマンションが立ち並ぶ地域。
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◆消防隊員5時間半、必死の救出も…無念
崩落事故で死亡した男性作業員2人のうち、1階に止まっていたダンプカーの運転席にいた56歳の男性の救出作業は難航した。5時間半にわたり消防隊員が救出を試みたものの、無念にも現場で死亡が確認された。
千葉市消防局によると、運転席は上から落ちてきた天井や鉄骨などの廃材で押しつぶされ、男性の背中は見えるがすぐに救出できなかった。重機で廃材を除去するのに時間がかかった。午後3時ごろ、待機中の救急車から担架が運び込まれたが、約50分後に空のまま戻された。救出された男性はすでに死亡しており、遺体は警察に引き継がれた。
現場前の道路は警察が通行を規制し、多くの歩行者や近くを行き交う車の運転手らは「何が起きたのか」という面持ちで目を向けていた。(長屋文太)